院長のご挨拶 患者さまそしてご家族みみなさまへ 公益財団法人十愛会十愛病院・病院長・常務理事 野崎秀次

開院44周年を過ぎて

団法人十愛会十愛病院・病院長・常務理事 野崎秀次

当法人が、横浜・東戸塚の地にて、病院・相談所事業を開設してから、まもなく45年の歳月が流れようとしています。前理事長時代に行われた病院全面改築からは9年がたっております。
 昭和の時代の開設当初、周囲はほぼ田畑や、いくつかの牧場に囲まれ、東戸塚駅が昭和55年10月にできる以前は、公共交通機関による当院へのアクセス自体が非常に難しく、一般的な外来診療などは行うことは困難な中、主には入院されている患者さんへの対応、相談・巡回療育相談、福祉施設への医療協力、無料低額診療を行うことなどが、事業の主体でした。職員の送迎には、マイクロバスが横浜駅まで往復し、現在はない職員宿舎を併設しておりました。今現在の、東戸塚駅周辺の賑わい、病院周囲の多くの住宅などを目にするとき、ふと、長いようで短い"時間"を感じております。

さて、昨年度、新しい法人制度改革にともなって、当法人も平成24年5月に神奈川県からの認可をいただき、同6月1日から、公益財団法人としての事業をスタートさせていただいております。法人の移行に伴って、新しく7名からなる評議員会、新しい方をむかえた7名の理事と2名の新監事からなる理事会による運営となりました。そして、いまなお、力不足であることを自覚しておりますが、私が新・理事長としての責務を担わせていただくこととなりました。病院長・常務理事としての仕事は20年が立ちましたが、今、あらためて責任の重大さを意識しつつ、事業の発展のために、力を注いでまいりたいと思います。これまでに、行政のかた、地域のかた、のみならず、ここに書き尽くすことなど到底できない多くの方々からの篤きサポートあっての事業体の歴史だと認識しております。今後におきましても、引き続き、ご指導、ご鞭撻のほどをよろしくお願いいたします。

病院のホームページを開設し、はじめて、ここに文章を書かせていただいた平成22年度末というのは、東日本大震災という、激甚災害の直後でした。それこそ、長くもあり、短くもありですが、震災からおよそ2年余が立ちます。原子力災害という側面もあるために、"復興"という意識を持てるためには、長い時間が必要であり、種々の試行錯誤がいまなお必要と考えます。いずれにせよ、今なお、多くの課題、余波が続く中、被災にあわれ、また今なお、様々な形での心労に苦しまれておられる多くの方々に、謹んで哀悼の意を捧げ、お見舞いを申し述べさせていただきます。
 医療の事業体としては、お見舞いを述べるだけでなく、"災害時の障碍児・者支援の在り方"といった、課題を与えられているという意識を引き続き持たなければなりません。この先もこの国は、どの分野であっても、それぞれの事業体が、それぞれが持つ特性を生かしつつの対応が重要となることは、間違いありません。小規模でありますが、当会が可能な、医療部分の受け入れの在り方などを含めて、何が重要な課題となるか等、今後も引き続き、多くの方からのご意見などを頂戴し、意識して考え続けたいと思っております。

当会の福祉医療事業は、小生が3代目の病院長・相談所長として就任してから20年が経つところまでまいりました。初代院長が開設にあたって考えた"地域で療育困難な知的障碍児・者への主に精神科的合併症の治療を含めた、時間をかけた医療・療育対応を"というコンセプトは、時代の変遷とその対応を意識した適切な対応を行いつつも、根底は何ら揺らぐことなく、日々意識して皆とともに活動しております。

基本は、医療の進歩を意識し獲得すべき努力をするなか、"病気を診ずして病む人を診る、支える"という小生の大学母校の学祖の言葉がいつの日も基軸にあって、皆とその姿勢でいるように努力しています。実情は、内容が重複いたしますが、その運営にあたって、ここ数年、さらに加速度化している医療の変容、厚生行政の変容の中にあっても、ぶれることの無い様に、様々な職種とともに努力してきております。また、私たちの仕事は、同じ学祖の言葉由来になってしまいますが、"医師たるまえに紳士たれ!"という言葉も大事にしていきたい、即ち、多くの医療職の集合体であることはもちろんですが、まずは、"gentle"であることが大切と考えております。

現在の当院の基本活動は横浜市の短期入所事業との連携も含めた入院部門・外来部門・市の知的障碍者への2次療育相談機関、無料低額診療機関としての活動になります。
 いつも職員一同に伝えているのは、職種に関係なく、患者さんに接するすべてのスタッフのすべての日々の活動が、福祉医療機関の顔になるがゆえ、可能な限り、前述した意識で活動してほしいということであります。
 加えて、近年、医療機関が、特に意識を強化しなければならない、職種を問わずの安全管理意識、職員自身の心身の健康管理、いわゆる種々の関係性の中でのリエゾンなどについては、管理者としての神経を研ぎ澄ませております。同時に、時代の趨勢はさることながら、全てに状況における個人情報の取り扱い、当院ならではの特性を踏まえた、職員教育のあり方を、種々、考えていかなくてはなりません。こうして書くことはたやすいのですが、日々、実現するには、このような課題意識を繰り返し、自分自身が振り返りつつ、みなが活動できるような組織になるよう努力することが、医療機関の基本である、患者さんへの良質な医療サービスの提供にあたっての基軸になると考え、意識をもち続けたいと考えております。

日々の福祉医療活動にあたっては、"人を診る・支える"ための良質な医療の提供が大前提であり、前述した意識を背景に、各職種、各自の研鑽の機会などに積極的に参加できるような病院づくりに心掛けております。あわせて、院内研修の充実、および、医療安全や院内感染対策、精神病院ならではの付随する各種委員会(行動制限最小化、医薬品安全、防災、栄養、心理会議など)の在り方は、小病院であろうとも重要な位置づけと意識して、スタッフと共に、真剣に取り組みつつの日々でありますことを記しておきます。

ここ数年苦しんだインフルエンザ対策も、職員とともに考えた対応マニュアルによって、おおよそ、5年間の入院患者内での発生数を少数に抑えられていることは、病院運営においての職員一同の努力の成果と考えております。しかしこのことは、現時点では、鳥インフルエンザの新情報なども含めて、終局がある課題ではなく、引き続き緊張を持っています。継続した環境整備・感染防止対応にあたっては、内部の努力だけにとどまらず、併せて関係各福祉資源に多大なご協力を頂いておりますことに、この場を借りて、あらためて御礼を申し上げます。

さて、今年度は、医局においては、常勤医師3名、非常勤医師7名、常勤の臨床心理士の体制が続けられた1年ではありましたが、一時、小生自らの、体調不良であった時期もあって、外来の初診希望の患者さまはじめ、多くの方にご迷惑をおかけしました。重ねてこの場を借りまして、お詫びを申し上げます。
 幸い新年度は、診療体制の交代などはありますが、小生が病院長を続けさせていただき、副院長を含め、常勤医師3名が診療を継続いたしております。非常勤医師も、精神科医については、ひきつづき3名の医師の勤務があって、精神・神経科につきましては、総勢6名の医局体制を基軸として活動しております。しかしながら、診療体制の在り方、初診患者さんや再診患者さんへの対応のあり方については、いまなお、システム・予約時間の問題など含めて、これまでのままでは、病院体制としても、多くの調整が必要ななかにあります。患者様のご理解、そして、なにより病院の適切な医療提供をわすれずにいるなかでのことでございます。どうか患者さまなど、各位におかれましては、この間の状況につきまして、種々のご不便をおかけしていますが、どうか、ご理解を賜りたいと思います 。

さて、入院部門においては、機能分化した2病棟制(精神科閉鎖病棟である急性期治療病棟および開放病棟である療養病棟)となって、時が経ちました。前者においては、主にここ数年の横浜地域における福祉資源の充実が図られる中、なお人口急増の速度には、到底追いつかないことなどを背景とし、さらに入院を要する方の種々の課題が、年々高度なものになってきているという難しさがあるなかでの運営を意識する中であります。後者は、知的障碍者も健常者等しく、高齢化という課題を考える時代、すなわち合併身体疾患の複雑化といった問題を考えながらの日々の運営であります。ひきつづき、身体疾患への当院ならではの医療体制のあり方の模索、ここにおきましても医療安全を意識しつつ、看護部体制・援助職員体制の強化を行いたいと考えております。くり返し述べてきた、職員の意識の向上のためには、さらなるソフト、ハード両面でのアメニティーの充実を図ることが重要と考えております。短時間での急な達成は難しいことかもしれませんが、これまでの努力を検証しつつ、継続し、日々の歩みの中において、精神病院であるがゆえの特性に応じた安心できる病棟づくりを目指していきたいと考えております。

外来診療については、非常に多数の施設の嘱託業務と合わせてのものであり、かなりタフな部門になっております。しかしながら、この部分の充実なくしては、将来のさらなる広く公益に値する活動が成り立たないとともに、閉じた精神病院であってはならないというかねてよりの小生の理念により、なおいっそうの質の充実を図っていきたいと考えております。

こうしたなか、ここ数年、語り続けていることではありますが、当院を利用される方々にご理解いただきたいことを3点述べたいと思います。

ひとつは、当院の基本は、救急部門などは持たない精神科単科医療機関であり、すなわち入院病床は、精神科専門治療、障碍サポートを含む療養のための病床として許可された病床であることです。他の医療機関の受診困難などといったことなどを理由に、いささか単独の精神科病棟の機能を超えるようなご依頼があることです。今日、大学病院などの精神科医療を含む、総合医療機関では論議されることと思いますが、民間の単科精神医療機関の本来の能力・果たすべき役割とは、異なると同時に、守備範囲を超えることを何卒ご理解頂きたく存じます。私たちも日頃、自身の適切な守備範囲を意識しています。通常の外来診療時においても、こうした身体疾患に対して、きちんとした、それぞれの専門身体科の診療を受けることなく、ご依頼に対して、安易に答えてしまうことは、最小限にしなければならないと考えております。
 本来、専門性のしっかりした医療機関を受診すべき障碍をお持ちの方たちの、適切な診療機会に対して一見、便利に感じられても、日々各科の診療が進歩する中、大変失礼なことになると考えています。こうした事象への医療の在り方は、広くこの国の課題であると思います 。

つぎには、当院は先に述べたことではありますが、いまなお、日本型医療制度の中では多くの進歩がある中なのに、こと精神科医療という立ち位置から見ても、知的障碍の4文字が患者さんの前段にあった時、小児科年齢の早期療育は別としても、青年期以後、成人年齢での精神科合併症を併せ持った時に、種々な精神医療を受ける際に、多くの医療現場においては、様々な困難を伴うという現実があります。このことはある意味、当院が課せられている公的役割であることは認識しています。現実には、新患の方達への診療体制などは、次の3つめに述べる実情と同時に、どうしたら継続的でスムースな受け入れが可能な体制づくりをするのかを、長年の課題ではありつつも、日々考えているところです。現実には、非常に長い予約待ち時間が発生している状況を解決していかなければなりません。どうか、引き続きお時間を頂きたいと思います。

3点目は、当院は、いわゆる社会福祉資源と異なって、対応する方に対して定員というものがありません(病棟の定床数は当然ありますが)。医療機関故、当然ではあります。ただ、当院を利用となっている方達の状況からご理解いただけると思いますが、一度関わりが始まると、半永久的になるのがこれまでの現実であり、ある意味、当初、トータルライフサポートの重要性を意識してきた結果であると考えております。しかしながら、今後、長い展望に立った時には"投薬などの医療対応を含めた卒業生を出していく"、あるいは"地域の機関との適切な連携を掘り下げて模索していく"ことを検討していかないと、病院総体として、現状も、実情はそれに近いものがありますが、いわゆる加重状況になってしまいます。結果は、個別の方へのサービスの質が低下していきます。こうした問題については、時間はかかりますが、種々の工夫を検討していかなければなりません。引き続き公益に、継続的な福祉医療活動が可能な事業体たるための必然的な課題と考えております。どうぞ各位の皆様のご理解、ご協力をお願いしたいと思います。

2008年発達障害研究国際会議にて
(南アフリカ:ケープタウン)

最初に述べましたように、昨年度は非常に重要なこととして、当院も国の法人改革に対応して、"公益財団法人"への移行をおこないました。これまで自負してきた"公益性"に自信を持つなかでのことですが、自身の仕事のあり方も含めて、重要な転機にいたしたいと考えております。

以下は、少し個人的な想いが入りますが、当院を利用することになるまでの、患者さんやご家族、周囲の援助者の方たちに置かれましては、すべての方にそれぞれの歴史があるように感じております。そうした中、当院との関係がスタートするにあたって、どのような状況であれ、隔てなく、それぞれの方の純粋な心情がまずは生かされることを基本として、我々医療は、それをそっと側面から支えること、それこそ、適切な立ち位置であり、適切な"公益性"なのではないかと考えます。

それぞれの方の"価値観"をあくまで尊重して、適切な医療のサポートを行なっていきたいと考えて、常に、原点に立ち返ることが大事と考えております。長くなりましたが、理事長・病院長のご挨拶とさせていただきます。

最後になりますが、当院が今日を迎えられていることは、日々、これまで等しく、長年支えていただいている横浜市、川崎市を中心とした行政各局からの様々な御支援・ご支持なくして、当院の活動はありえません。心より感謝申し上げ、大変、長くなりましたが、御挨拶とさせていただきます。

平成25年6月30日   理事長/病院長  野崎 秀次

病院長略歴

昭和52年3月
聖光学院高等学校卒業
昭和59年3月
東京慈恵会医科大学卒業
昭和59年5月
東京慈恵会医科大学付属病院長直属小児科配属研修医
昭和61年4月
同上 終了
昭和61年4月
東京慈恵会医科大学小児科科学教室 医員
埼玉県立小児医療センター神経科 医員
平成元年7月
東京慈恵会医科大学小児科学教室 助手
同付属病院柏病院勤務(病棟医長・小児神経専門外来担当)
平成元年10月
同付属病院新橋校勤務(病棟医長・小児科神経専門外来担当柏病院小児神経専門外来兼任)
平成04年4月
財団法人十愛会十愛病院 医局長
平成04年6月
東京慈恵会医科大学小児科学教室 無給医員
財団法人十愛会十愛病院病院長
(同相談室長・同常務理事)就任
平成24年6月
公益財団法人十愛会十愛病院 理事長(同病院長)就任
現在に至る

資格

  • 医学博士
  • 精神保健指定医
  • 社団法人日本精神神経科学会・専門医/指導医
  • 横浜市肢体不自由判定指定医

所属学会

  • 日本精神神経科学会
  • 関東小児腎臓研究学会
  • 日本小児科学会
  • 日本小児神経学会
  • 関東小児神経研究会
  • 日本発達障害学会
  • 神奈川小児神経懇話会
  • 日本神経病理学会
  • 日本育療学会

嘱託医

  • 社会福祉法人同愛会 てらん広場
  • 社会福祉法人和枝福祉会 愛
  • 横浜市知的障害者北部就労援助センター
  • 横浜市更生相談所
  • 社会福祉法人試行会 青葉メゾン
  • 社会福祉法人くるみの会 ひかりの園

役員

  • 公益財団法人十愛会(十愛病院)理事長
  • 社会福祉法人十愛療育会(横浜療育医療センター)理事
  • 社会福祉法人くるみ会評議員
  • 日本発達障害学会評議員
  • 発達障害者介護認定区分審査会・部会長